State of the Future 19.1 Executive Summary (Japanese)
- 0 Comments
Translated by Kazuo Mizuta 今日生まれた子供たちのほとんどは2100年まで生きるだろうと思われる。その50年前の世界を想像してみて欲しい―2050年の世界では、知能を強化された多く天才たちが毎日、新しい人々と、仕事の仕方を発見し、人生を生きがいのあるものしているかもしれない。人類の文明は、現在のものよりはるかに良いものになっているかもしれない。しかし、良い意思決定がなされなければ、決して明るい未来はやってこない。最新の「地球未来白書 19.1」は、データや情報、インテリジェンス、知的思考、それから人類の叡智を紹介し、良い思考のためのフレームワークを提供することを目的として作成された。 人工知能は量子コンピュータの発達を促し、さらに量子コンピュータは人工知能を発展させるだろう。この相乗的な加速度的発展は人間のコントロールや理解を超えてしまうかもしれない。科学技術の指導者、優れた研究機関や財団等が、この問題どのように発展するかを予測し、また管理するための方法を模索している。 その一方で、人間の平均寿命は1950年の46歳から72歳まで延びている。子供の死亡率、貧困、感染症や文盲率は下がった。人類の地球規模の神経組織が、現在構築されつつある―世界の52%、38億を超える人がインターネットで繋がっており、世界の2/3に達そうとする人が携帯電話で持ち、また、半分以上がスマートフォンを利用している。ミレニアム・プロジェクトによる「未来状況指標(State of the Future Index: SOFI)」は、世界は今後10年間、全体としてより良い方向に進歩し続けると予想しているが、環境問題や武力紛争、テロや組織犯罪は悪化するだろう。 IMFの予測では世界経済の成長率は2016年の3.1%から2017年には3.5%、2018では3.6%へ増加する見込みである。その間の人口増加が1.11%と考えると、世界的に一人当たりの所得は毎年2.39%の上昇が見込まれる。 極貧層に関しては、1981年の51%から2012年の13%へ、さらに今日では10%以下とみられているが、所得格差は拡大するばかりである。雇用を生まない成長が新しい標準となるようであり、資本と技術に対する投資の見返りは多くの場合労働に対するものより大きい。労賃が上がりAIやロボットが安くなると製造業やサービス業の失業率の割合は高くなる。だとすると、世界規模の構造的失業の混乱を避けるために、新しい経済の形が必要になってくるというのは多くの人が指摘するところである。こうしたトレンドからどのような未来が生まれるかについて、本書の第4章では、将来の仕事と技術の関係についての3つのシナリオを、ミレニアム・プロジェクトのノードによって17か国で開催されたワークショップから出た提言とあわせて紹介している。 現在世界の人口は76億人であり、これからわずか33年、2050年までには22億人が新たに加わるだろうと考えられている。その増加は食料問題、環境管理や財政支援システムにプレッシャーをかける。人口は高齢化しているが、画期的な生物学上の発見・技術が、今日では考えられないような健康で頭のいい働く人々をますます長生きさせることになるかもしれない。低所得、青少年の雇用が多い地域から高所得・高齢化する社会への移住は避けられないだろう。 現在世界各地でエコ・スマートシテイの建設が盛んである。同時に古い町がインテリジェント・シテイへと改装されている。中国の「一路一帯」構想は68ケ国に渡るインフラを整備するために、8兆ドルを貸し出すことになるだろう。中国、中央アジア、中近東、ヨーロッパをよりよくつなぐためのもので、歴史上最も膨大なインフラ構築構想であり、最新のAIによるエコ・スマート・システムを組み込んだものであることが望ましい。グローバルな都市化はあまりにも複雑になりすぎてAI無くして管理できなくなる可能性がある。仕事を求めて動く労働者たちは世界中で交通渋滞を巻き起こすだろう。新しいテクノロジーは仕事を労働者に回すのがますます容易にするだろう。最近使われるようになった「第4次産業革命」はクラウド管理によってセールスや生産・市場調査まで、全てにAIが使われることを意味し、交通、水管理から発電とその仕様に至るまで拡大する。 現在では世界の90%を超えるところで処理された飲み水を手にすることができる。しかし、全ての大陸で地下水位は低下している。そして、人類のほぼ半分が2ケ国かそれ以上の国によって管理される水源から水を得ている。電子ゴミによる汚染は世界中の地下水を毒素で汚している。途上国の成長が続き、その産業、農業、汚染増加、国民総生産が増え、国民一人当たりの所得が増え、水の使用量も増えていけば、大きな変化無しでは、いずれ水危機や人々の移動が避けられないものとなるだろう。 古代の大量生物絶滅時には、97%の生物が死滅したのだが、その原因となった大気のCO2の増加は、食糧生産、エネルギーや生活習慣に変化がない限り再びおこるかもしれない。3兆トンの氷の塊、それはルクセンブルグの2倍の面積になるが、南極の氷河から分離した。地球規模で起こる気象災害による損害は、スイスの保険会社の試算によると、2015年では940億ドルに達し、2016年には1750億ドルに増えている。 世界の大半の人々は平和に暮らし、また、1990年から2010に渡って武力闘争は劇的に減少していたが、その後紛争は増加傾向にあり、世界の半分は、潜在的な不安定要素を抱えている。戦争の形態は国境を越えるテロに、国際紛争は内乱へ、また公にされないがサイバー攻撃へと変容している。情報戦争(コンピュータ、ソフトウエア、コマンド指示系統を攻撃するサイバー攻撃とは別のものである)は、対象が信頼している情報を気づかれないままに操作して、対象が自分の利益に反する、あるいは操作する側に有利になる決定を下すように、情報操作を行う。ボットによるファイクニュースの発信、ビデオやその他の形の情報戦争により、民衆には対応する手段のないままに、真実のあり方が操作されるようになりつつある。インターネットは、大衆のガバナンスへの参加を促進し、汚職を摘発しているが、報道の自由はここ数年減少の傾向にあり、反民主主義的な勢力は、新しいサイバー攻撃を活用し、民主的な手続きを操作している。 核拡散は止まっておらず、将来、ローンウルフ型のテロリストはいつの日か大量破壊兵器を製造し配備する能力を持つかもしれない。政府の技術的な介入や公共のメンタルヘルスや教育制度だけでは、将来的に個人が大規模破壊技術を開発することを防ぐのに十分とは考えにくいため、家族および地域社会は新世代のより倫理的な人々を育まなければならない。組織犯罪は年間3兆ドルを超える金を動かし、その額は世界の軍事費の総計の2倍にもなる。年間1.5兆ドルは贈賄に使われ、汚職は、50億人が暮らす国の開発にとって大きな障害になっている。組織犯罪、汚職、反乱、テロの区別が曖昧になり始め、民主主義、開発、安全保障への脅威が高まっている。 現在の国民国家、セクター別アプローチに加えて、この成長に対抗するための世界的戦略が必要である。 国境を越えた、異文化間のコラボレーションは、病気を減らし、世界中でより安全な交通システムを構築し、そして世界の知識の大部分を無料またはほとんど費用なしで共有する世界規模のインターネットを生み出した。神経科学はどのようにして脳の能力を向上させることができるかを示しており、AIはあなたが学ぶための最善の方法とあなたが何をすべきか、何をする必要があるか、考えることができるように開発されつつある。 国会や企業、あるいはそれ以外のところでの女性役員はゆっくりではあるが着実に増えているとはいえ、国連の持続可能な開発目標である2030年までに男女平等と女性と女児の能力向上を達成するのには十分な速さではない。10歳女子の大半は性的差別を受ける諸国で育っている。 パリ協定は化石燃料の消費を減らし、再生可能エネルギー源の利用を増やすことを期待している。石炭の使用は2016年に劇的に減少した。太陽光エネルギーと風力エネルギーは石炭とコスト競争力があり(特に外部費用を考慮した場合)、再生可能エネルギーがベースロード電力を供給できるようにするために、大規模なリチュウムイオン電池製造プラントが建設中である。人間の状態を改善するための科学的な進歩と技術的応用のスピードは、計算科学と工学、人工知能、一般的なデータベースプロトコル、ムーアの法則、インターネット帯域幅(1年に50%の増加)のニールセンの法則によって加速されている。合成生物学、3D / 4D印刷、人工知能、ロボット工学、原子レベルの精密な製造および他の形態のナノテクノロジー、遠隔操作、無人機、拡張仮想現実、再生可能エネルギーシステムの低コスト化、および集合知能システムとの間の将来の相乗効果を踏まえれば、過去25年間の科学技術の変化は、次の25年に比べてゆっくりとしたものに感じられるだろう。 ますます、決定はAIによって下されるようになる。 それらのアルゴリズムは倫理的に中立ではないので、将来の倫理の未来は、ソフトウェアに組み込まれる倫理的基準をどのように設定するかにある程度影響されるようになる。その間、政治的な情報操作によって、世界中で真実の追求をかき乱されるだろう。。 今日のグローバルな課題に取り組むために必要な、国、制度、政治、宗教、そしてイデオロギーの境界を越えて協調して行動するという道徳的意思は、グローバルな倫理を必要としている。世界的な倫理は、ISO規格の進化と文明の規範を定義している国際条約を通じて、世界中で生まれている。 まとめると、世界はどうなっているのだろうか? 一般的に未来は良くなっていると考えられるか、それとも悪化しているのだろうか。 この質問に答えるために、ミレニアム・プロジェクトは、世界中のノードメンバーと彼らによって選ばれた専門家と共に、20年以上にわたり15のグローバルチャレンジの前進と後退について追跡して、それに基づいて、未来の状況についての指標であるSOFIを作成した(第2章参照)。 2017年のSOFI(図1)は、過去27年間よりも遅いペースではあるが、世界は全般的に改善し続けていることを示している。今後10年間の世界的な改善率は、1990年から2017年の間の3.14%に対し、1.14%になるだろう。これは主に、2008年の金融危機後の回復の遅れと2009年の世界不況によるものである。2017年の報告に大きな影響を与えた要因にテロ攻撃の数があるが、これは非常に予測が難しいものである。テロを封じ込めることができれば、SOFIはかなり良く見えることになるだろう。第3章では、将来のテロリズムとその抑止に関する世界中の専門家の見解を紹介する。 図1:2017年の未来状況指標 SOFIを計算することの利点の1つは、私たちが勝っている分野、負けている分野、または変化がない分野を特定しことが出来ることだ。これは、政策的優先順位をつけるための助けとなる。 図2は我々が勝利しているところの傾向を示し、図3は私たちが負けているところ、またはほとんど進歩がないところを示している。第2章では個々の変数とそれらがどのように変動するかについて、より詳細な分析・評価を行っている。 図2:勝利している部分(改善しているもの) 図3:失敗しているか進歩がない部分 どちらかというと、上手く行っているところが負けているところ以上あるのだが、上手く行っていないところの状況は非常に深刻だ。 水、食料、失業、テロ、組織犯罪、および汚染について、「これまで通りのやり方」が続いた場合には、いずれ複雑な大惨事が起きる可能性がある。人類はこれらの惨事を回避し、素晴らしいな未来を築くための手段を持っているのだが、我々の見通しを改善するために必要な決定や文化的な変化のあまりにも多くのものが実行されていない。 世界の最も重要な課題と解決策は、本質的に世界規模のものであるが、世界規模の先見性や世界規模の意思決定システムはめったに使用されていない。グローバルガバナンスシステムは、増大するグローバルな相互依存に追いついていないのが現実だ。 しかし、世界的な意思決定は、気候変動に関するパリ協定や持続可能な開発のための国連2030アジェンダが着実に実施され、、また国際標準化機構や世界保健機関などの活動が進展すれば、改善の兆しを見せるかもしれない。 “国連持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定は、健康な地球上で平和と繁栄を達成するために世界がこれまでに見た中で最も強力な共通の課題を提供するものです。” 国連グローバルコンパクト 15のグローバルチャレンジ 15のグローバルチャレンジは、人類の未来にかかる重要テーマの地球規模および各地域の見通しを評価するためのフレームワークである。各チャレンジは相互に関連しており、 一つが改善されると他の問題への対処がより簡単になる。逆に、一つの状況が悪化すれば他の問題に対処することが難しくなる。あるチャレンジが他のチャレンジよりも重要であるかと主張するのは、人間の神経系が呼吸器系より重要であると主張することに似ている。 図 4 グローバルチャレンジ
Read More